第49話

沖田・恩田の家の女たち、そして、長男も。


長谷川家に、遠藤家、そして、海渡の家の、村上家。


他にも、京極の家に”遣える”者たちには、将来就くべき仕事、行動すべきことが決まっている。



その通りに動くことは楽に見えるだろう。しかしそれは、逆に言えば自由がないということ。



なりたいこと、やりたいこと、それらがあったとしても、俺たちはそれをやることが許されない。



俺は、生まれる前から京極家の当主となることが決まっていた。


それは言い方を変えれば、京極玲でなくとも、京極家の長男であれば誰でも”神”となれる。そういうことだ。



呼吸の乱れがなくなってきた雫の背中を撫でながら、小さくため息を吐いた。



この、小さな女に、どれだけの枷が付いているのか。


そのどれよりも大きな物を、他でもないこの俺が、付けてしまった。



もしかしたら、俺がこいつを選ばなければ、雫は幸せになれたのかもしれない。



こんなに思い悩ませることもなかったかもしれない。



しかし……



俺は最低なことに、後悔などしない。


なぜなら、


「雫、落ち着いたか?」


「はい。」



この胸に抱くこの女が、”欲しい”からだ。

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