第44話
side 雫
「俺たちの関係は、決められたものだ。」
「……はい。」
その言葉は、私には当てはまらない、そう思ってしまう。当主様に申しわけがなくて、俯こうとすれば、当主様は私の顎をその長い指先で止める。
まるで、自分から目を背けることなど許さない、とばかりに。
黄金色とは違う、その目は、ライオンにそっくり。狗を奉る家系なのに不思議。
それとも、犬神というものはこんな目の色をしているんだろうか。
当主様の見た目は、異形でしかなく、怖がる人が多い。
でも私は、実際に目の前にしてみて、思った。
あまりにも美しく、粗すらないその見た目こそ、人々を怖がらせているんじゃないか、と。
私を見つめる当主様は美しく、白い髪、金色の目がその見た目に神秘的なものを感じさせる。
神々しさとは、畏れに繋がるものだ。
穢してはいけないものは、初めから触れることすら躊躇わせる。
ふと、お腹に痛みにも似た疼きを感じた。
私は、この人に……何度も抱かれたんだ。
痛みも、快感も、怖さも、全て覚えている。忘れてしまえればどんなにいいか。
私は、こんな幸せ、知らないから。
夢が崩れた時、この時を思うのが恐い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます