第38話

夢うつつだった、というのはダメな気がするけど、私は、この人と【婚姻の儀】を行った。



現代の婚姻届けにもサインをして、名実ともに夫婦になっている。


それを全て、ふわふわとした意識の中見つめていた訳だけど……



なぜ今、裸なのか。やはり理解できない。




「お前は、嫌なのか?」


「ん、」



そう聞きながらも、当主様は私の唇に熱を帯びたそれを押し当てる。柔らかい唇の感触は、初めてのもの。


何度も感じるそれは、重ねるごとに熱を上げていく。



当主様の唇はまるで、激しく燃える火のよう。そう感じるのが、私の温度が下がっているせいだと気付くわけもなく。私はただ、当主様の口づけを受け続けることしかできないでいた。



息苦しさを感じ、少し口を開ければ、生々しい感触が、口内へと侵入してくる。


唇よりも、温度の低いそれは、艶めかしく、いやらしく、私の舌を追いかけた。



「んぁ、……は、」



思わず、声が出るたび、その舌の動きは早急に、そして熱く、動きを激しくする。



その間にも、彼の手は忙しく私の体を這い、自分ですらあまり触ったことのないところにまで侵入した。

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