第35話
しかし……
「自分は嫁に行き、雫様は追放される。それを信じて疑わなかったのはなぜだ?」
その質問に、沖田霧の目が確かに揺らいだ。
「母親に言われただけで信じた?いや、お前が気付かなかったはずがない。」
歩み寄れば、女は小さく首を横に振るだけ。見えるのは、醜さ。反吐が出るほどの。
「お前は、確信していた。自分の方が選ばれると決まっていると。」
この女は結局、良い姉を演じていただけ。内心では雫様を卑下して見ていた。
「傲慢という言葉がある。お前にぴったりだな。」
女の目から、涙が零れ落ちる。
「っっ、霧っ、」
母親が庇うように俺と女の間に入り、オロオロと様子を伺っている。最早、失笑しか漏れなかった。
「さて、沖田家当主、お前は今日をもって家督を長男に譲れ。」
「え?」
間抜け顔に眉を顰めた。罰とは、悪いことをした時に課せられる。今がその時だろう?
「【迎の儀】の妨害が理由だ。妻も共犯。お前たちは本日をもって沖田家を追放する。」
「っっ、」
「そんなっ、」
「嘘でしょう!?」
息を呑む奴らを前に、俺の苛立ちはピークに達していた。
「長男が継げば、お前らは沖田家の人間だろうが我が主には関係のない人間になる。これだけのことをしたんだ。追放だけで止まれてよかったな。」
これは、本心だった。玲様を怒らせて、この程度で済んでよかっただろう?
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