第33話

side 地平




「烏滸がましいと、思いませんか?」



そう言い放った背後で、襖が閉められた。


それは玲様が、雫様にこの続きを聞かせたくないという合図だ。




「沖田家は、我が主には必要な家だ。それでも、我が主よりは”上”ではない。」


「っっ、」



雫様の両親は、揃って顔を歪めた。


神に遣えるべき家の人間が、なんという失態をしたのか。



「次女は、次点の女ではない。ましてや、世話係でもない。」



沖田家では、どのように歪んで伝わってきたのか。


もう一方の恩田も怪しい。一度、調査を入れるべきかもしれない。



「次女も、候補なのです。当主様は、長女か次女、”どちらか”と契りを結ぶ。それは昔からの決まりだ。」



当主様は、沖田・恩田家の長女か次女のどちらかを選び、妻にする。その時に言うのが、先ほど玲様が2回目を言ったあの台詞だ。




「それをお前たちは、次女はないものとして扱った。これは京極に対する立派な怠慢だ。」


「っっ、」



沖田家当主である父親は、言葉も出ずに俯いてしまっている。長男であるはずの男はこの場に参加できない決まりだ。



気に入らないのは、母親の反抗的な目。

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