第29話
side 玲
「なぜここで寝るんだ?」
「さぁ?」
犬が雫をねぎらうように動いたあと、礼を言った雫は事切れるように眠ってしまった。
すやすやと、幸せそうに寝る雫を支えるのは俺じゃなく犬。
こいつの方がよっぽど信頼されていることに、焦りと嫉妬がこみ上げてくる。
「こいつは俺のだ。」
「玲様、犬相手に何をおっしゃってるんですか?」
地平が呆れたように言うが、ここは分からせておいた方がよくないか?
このまま行けば、こいつが旦那みたいになりそうだ。
そんな時だ。犬が動き出した。そのせいで犬に寄りかかっていた雫の頭が床にガツッと音をたてて落ちていったが。犬は気にする様子がない。
結構扱い酷くないか?それでも雫は、起きることなく幸せそうに眠っている。
その穏やかな寝顔に頬が緩んでいると、犬は俺の前で頭を垂れた。
まるで、服従を示すようにだ。
「こちらこそ、雫を頼む。」
そう言って撫でれば、犬は目を細めた。
なんとも、”表情”のある犬だ。無駄に吠えはしないし、雫に絶対的な忠誠を誓っているように見える。
どちらかといえば保護者に見えるが。
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