第26話
さっきから気になっていたところへと視線を移すと……やっぱり。
やっぱりまだ、当主様の手は私の手を握っている。
熱が、簡単に広がった。
目の前の人に、ただ、手を握られているだけで…
まだ長谷川さんと揉めている当主様がこちらを見ていないのを良いことに、少しずつ手を引っ込めてみる。このまま気付かない内に手が解放されますように、と。
それなのに。
「玲様、決まりです。」
そんな低い声が聞こえてきたかと思えば、当主様の、私の手を握る手に力が込められた。
「不愉快だった。」
「ええ。」
「なんだ、あそこの女たちは。」
「教育しておきます。」
私の隣に身体をひっつけるように座った当主様は、口を尖らせていて。それに、さっきの低い声の主が穏やかな表情で答えている。
もう1人いた、従者の1人は、穏やかな表情の壮年の男の人だった。
目が緑色なところを見れば、遠藤家の長だろう。
「ここも沖田家だろう?」
「いえ、正確には違います。」
「早く帰りたいんだ。」
「すぐに沖田家に行かれれば、それだけ早く終わりますよ。」
まるで子供のような当主様の言葉に、一つ一つ丁寧に答える彼は、表情に一切の乱れがない。
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