第22話

side 地平




玲の纏う空気が、キンと冷えたものへと変わる。


それも分からないでもないが、こいつが怒ると何かとメンドクサイ。



神のような扱いを受け、幼少の頃からそれが当たり前として育ってきた。そのせいで基本我がままに育ったこいつは、自分の思い通りにならないのが大嫌いだ。


そしてそれよりも嫌うのは、間違ったことを間違っていると認識できない”馬鹿”


そんな玲は、こういうことを最も嫌う。



【迎の儀】は、当主が決まっている花嫁を迎えに行く儀式じゃない。当主が花嫁を”選ぶ”儀式なんだ。



そこに、選択肢が一つしかないのはあり得ない。しかし目の前のバカ共はそれを実現してしまっていた。


しかも、”選ぶわけの無い”方だけを残して。




「迎えに行くぞ。」



そうしなければいけないにしろ、この発言には、さすがの俺も驚いた。



「どうした。行くぞ。」



黄みがかったその目を獰猛に尖らせ、威嚇するように玲は俺を見ている。京極家当主に表れるその独特の色の瞳は、ライオンと同じ。



”狗”である当主たちがネコ科のそれと同じ色だというのも変な話だと笑ってしまう。



「如何様にも。」



そう答えた俺の言葉で、固まっていた蒼羽も海渡も漸くその表情を引き締めた。

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