第21話
『仕方がないので、教えましょう。』
偉そうな蒼羽が手にした資料には、沖田家の次女についての全てが書かれていた。そして、最後のページには、写真も。
その写真に写っている俺の望んでやまなかった女は、あの時凜と強く前を見据えていた目を、悲しそうに伏せていた。
それでも、当たり前のことだと思っていた。
長女と次女、2人が当主を出迎え、当主はその場で、花嫁を”選ぶ”
その当たり前の習慣が、長い歴史によってねじ曲げられていき、目の前の現象となって現れた。
「どういうつもりだ。」
【迎の儀】、俺が行ったそこには、豪奢な着物を着た女1人が嬉しそうに座っていて、その隣にいるはずの雫はいなかった。
「どうなさいました?」
俺に不思議そうにそう問う沖田家の母親は、この場に足りないものがあることに全く気付いている様子はない。
「次女は、どうなさいました?」
答えない俺の隣で、地平が柔らかくそう聞く。
「えっ、何か、御用がございましたでしょうか?」
その言葉に、目を見開いた。母親は、困惑に歪めた顔を夫や長女に向け続け、あたふたとしている。
まるで、”次女はこの場にいないのが当たり前だ”とでも言うかのように。
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