第20話

【迎の儀】とは、京極家当主が妻を迎えに行く儀式だ。


初代の年齢に合わせ、それが執り行われるのは当主が21歳になった時。



俺は今日、21になる。本来なら誕生日にやったりはしないんだが、待てなかった。



俺が惚れた女、雫を自分のものにできる日だからだ。



何でも与えられ、望めば手に入る人生だった。しかしそれらに俺は、興味などない。



心の底から震えが沸き上がり、極度の渇きを覚え、身体が落ち着きをなくす。そんな、自分が強く望む物じゃない限りはどうでもいい。



そう望んだものなど、これまでに一度も無かった。



しかし、あの日、俺は雫のまっすぐなその目を見て、それを体験した。



ため息を吐いて、なんとなく食欲も沸かない。そんな女みたいなこと、なによりもこの俺が体験できるとは。



しかも俺が結婚できる女は限られていて。


初めて、自分の生まれを呪った。


最悪愛人にでもすればいいかと思ったが、京極家ではいい待遇をされない。



沖田・恩田家以外の女たちは、俺の手元に置くだけで地獄を見るだろう。




それならば、俺が諦めればいい。



『それでも、諦めきれないのが、恋というものですよ?』



京極家に仕える人間らしからぬ台詞を吐いた地平には、苦笑いしか出なかったが。

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