第13話
side 雫
チッ、チッ、チッ、
秒針を、ただ見据えていた。
秒を刻み、分を刻み、そして時を刻む。
嗚呼、もうすぐ。
12月12日、午前10時。その刻は来た。
チッ、
「は、はぁぁぁー、」
長く吐かれた息は、安堵からじゃない。不安から解放された安心からでもない。
私の、人生が、
報われなかった人生が、
本当に、”用無し”とされた。
そんな、絶望から。
これまでの私は、お姉さまという勝てない壁の前、それをただ見上げていた。
それは、普通なら苦しい、辛いと思うだろう。
私もそう思うけど、だけどそれは、目標や行き先がある安堵感には敵わない。
この家にやってきた時に、確かに感じた解放感は、まやかしだったらしい。
たった数日なのに、この家に蒼と一緒にいただけで、何もできていない。私は目標を見失い、将来が見えなくなったらしい。
「これから、」
どうすればいいのか。そう続けようとして、口をつぐんだ。
これまで私は、何をしていたのか。これからの自分をどうしようと思って生きてきたのか。
それさえも、分からなくなったから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます