第6話

でも私は、その制度に感謝してる。あの家にいるよりは100倍はマシだから。



お姉さまには敵わない。それからは解放されるけど、私があの家に残るとなれば、両親と私だけになる。だからこそ、苦しい。



「息苦しい。」


「えっ、窓を開けましょうか?」



びっくりして思わず振り向いてきた運転手さんに苦笑いを返して首を横に振った。



お姉さまが嫁げば、私も解放される。


そして、あの子と幸せに暮らせる。



そう思っていた。



---、



「ありがとうございました。」



タクシーを降りて仰ぎ見たのは、私の家になる一軒家。もう、家かもしれない。とうにここに住んでるから。



玄関を開ければ、きちんと居た。



「蒼(あお)ただいま。」



狗神様のような金色の澄んだ目を私に向けるこの子は……



「寂しかった?」


「……。」



啼かない、犬。



撫でれば嬉しそうにしっぽを振るけれど、めったに吠えようとはしない。



蒼はミックス犬で、私が貰ってきた犬だった。


ミックス犬って今は愛らしさが増す、なんて愛されてるけど、蒼はシェパードとド―ベルマンのミックス。



様相は凶暴そうで、気性も荒かった。毛もところどころ生えていないところと生えているところがあって、子犬の頃は異形の様相をしていた。

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