第54話

「新作のテーマは運命の出会いということですが、今回初めて恋愛を中心に描かれていますよね。それはどうしてですか?」


「はい、今回はあえて恋愛だけに注視しました。今まで主人公はあらゆる場所で彼女に出会っています。しかし、」




雀がインタビュアーの女性の質問に淡々と答えている。それを私と光彦くんは、唯一スタッフさんが足を踏み入れないキッチンで見ていた。


収録中で話はできないけど。隣で頬杖をつく光彦くんが時折笑いかけてくれる。



キッチンにいる日常。そして目の前の非日常の雀。なんだか違う世界同士がくっついちゃった感覚で不思議な気分だ。



撮影が始まると、スタッフさんたちは誰一人私を見る人はいない。みんなプロだから当たり前だよね。



そしてみんな笑顔で雀のインタビューを見ていた。



雀は、雪花の新作から冬華雀としての普段の生活まで、ほんとに細かく聞かれていた。これから放送できるものを抜粋するんだろうけど、かなりの数の質問にスラスラ答える雀の対応力の高さにびっくりしてしまう。



「少し、休憩を挟みましょうか。」



そろそろ撮影時間も1時間過ぎた頃、ディレクターらしき人がそう言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る