第49話

「ふふっ、分かった。光彦くんはよく追われちゃうんでしょ。」


「そうなの!分かる?」


「うん、なんとなくね。」



光彦くんのうんざり顔を見れば誰だって分かると思う。光彦くんは言っちゃ悪いけどこの年まで独身だし。



だけど独身なんて信じられないくらいかっこいい上、あの超有名ファッションブランドテディのデザイナー兼社長さんだ。



「光彦くんかっこいいもんね。」


「……それ、もっと言って。」




嬉しそうに笑う光彦くんに、私もさっきの恐さも忘れて笑顔になってしまう。



そうだ。光彦くんも芸能人みたいなものだ。多分たくさん、好奇の目で見られてきたんだろうな。




「ねぇ光彦くん。私は、気にしなければいいのかな。」


「んー?」




膝の上の指先を見ながらそう聞いた。私は雀の婚約者だけど、なんの取り柄もないただの高校生だ。そんな私がスタッフの人たちに凝視されたくらいで嫌な思いをしたなんて、自意識過剰だったのかもしれない。



あの人たちはきっと、私じゃなく雀の婚約者に興味があるだけ。”粗”を出さないようにこの部屋から出なければきっと、もう会うこともない人たちだ。

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