第48話

「いいよ。どうぞ。」


「おっ、マジで?ありがとー。」




光彦くんを招きいれて再びリビングを見ると、スタッフの人たちはまだ私を見つめたままだ。


思わず苦笑いを零して、もう一度頭を下げてドアを閉めた。



「はぁ、」



ドアを閉めただけで、重いなにかに開放された気分になる。この一瞬だけでこうなるんだから、結局私に取材なんてまず無理な話だ。



そこをちゃんと分かってくれた上で条件を出してくれた雀と秋穂さんに感謝した。



「みんな興味あるんだよ。」


「え?」



振り返れば、光彦くんは床で胡坐をかいてこちらを見ていた。すぐに横になって肘をついて寝転がったのを見て笑ってしまう。



まるで自分の家みたい。



光彦くんの前に腰を下ろせば、光彦くんは顎でドアを指した。



「噂の雪花に婚約者がいるっていうんだから、そりゃ興味あるでしょ。」


「そんなものかな。」



呟いた私の言葉に、光彦くんが大きなため息を吐く。



「そんなもんなの。人なんて、しょうもないことが気になるんだから。芸能人と付き合ってる相手が、例えそれが一般人だろうが、どんな見た目なのか、どんな職業なのか、気になるのが世間ってもんでしょ。」



嫌そうに顔を顰めた光彦くんが、あまりにもやさぐれた感満載で吐き捨てるから……

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