第47話
「ふーちゃん、俺ー。」
「光彦くん?」
声の主は、いつもより緩い声で私を呼ぶ。それがなんだか少しだけ、緊張を和らげてくれた。
ドアを開けば、光彦くんが笑顔で私を見下ろしている。その笑顔につられるように私も笑顔になりかけた、けれど。
「……。」
光彦くんの後ろから、突き刺さる視線たちに、一気に身体が強張った。
Tシャツにジーパン姿で何かの機材を運んでいる若い人。
床にカメラを置いて、それをチェックしていたらしい中年の男性。
清潔感のあるスーツ姿で、とても綺麗な女性。
撮影スタッフであろう、その場にいるみんなの目が、私をジッと見つめていた。
「……ぁ、」
気まずさとか、緊張なんかじゃない。あからさまに向けられる好奇の目に、恐怖を感じた。
「冬ちゃん、俺も入れてよー。緊張しちゃってさぁ。」
「え?」
いつもは雀とまったり過ごしているリビング。そこはなんとなくピリついた空気が流れている。だからこそ、なのか。光彦くんの緊張感のない緩んだ声は、どこか安心感をもたらせてくれる。
少しだけスタッフの人たちに頭を下げて、光彦くんを見上げた。
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