第45話

「すっ、雀っ、」


「ふ、お前も真っ赤。」




そう言って鼻先にキスを落とせば、恥ずかしさが極まったのか冬陽の身体から力が抜ける。



あー、可愛い。心の中で身悶えしつつも、冬陽以上に赤面しているゴリラに目を向けた。



「もう帰れよ。仕事は受けただろ。」


「いやでも、話を詰めないと……。」


「ほぼ詰めてるだろ。勝手に。」


「っっ、」



気まずそうな兄貴の表情に、イラつきが増した。どうせこの仕事、初めから受ける気でいたはずだからだ。すると俺の腕の中の冬陽が、胸元を弱々しく叩く。


「ん?」



気を使っているのか、そんな動作すら可愛くて仕方なくて、思わず自分でも気持ち悪いくらいの緩い声が出た。




冬陽の頬はまだ赤い。照れているのか泳ぐ目はまっすぐに俺を見ようとはせず、だけど口元は笑っている。



「コーヒー、入っただろうから、私運ぶね?」


「……ああ。頼む。」



まだ抱きしめていたいが、これ以上虐めると拗ねそうだ。それでも解放されたとばかりにそそくさといなくなろうとしているのも面白くない。



だから。



「っっ、」


「冬、」



冬陽の手を咄嗟に引いて、引き寄せた。



「好きだよ。」


「っっ、」



耳元で囁いたのは、俺の気持ちだ。



「もうっ、」


「ははっ、」



少し、悪戯心も働いたけどな。

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