第45話
「すっ、雀っ、」
「ふ、お前も真っ赤。」
そう言って鼻先にキスを落とせば、恥ずかしさが極まったのか冬陽の身体から力が抜ける。
あー、可愛い。心の中で身悶えしつつも、冬陽以上に赤面しているゴリラに目を向けた。
「もう帰れよ。仕事は受けただろ。」
「いやでも、話を詰めないと……。」
「ほぼ詰めてるだろ。勝手に。」
「っっ、」
気まずそうな兄貴の表情に、イラつきが増した。どうせこの仕事、初めから受ける気でいたはずだからだ。すると俺の腕の中の冬陽が、胸元を弱々しく叩く。
「ん?」
気を使っているのか、そんな動作すら可愛くて仕方なくて、思わず自分でも気持ち悪いくらいの緩い声が出た。
冬陽の頬はまだ赤い。照れているのか泳ぐ目はまっすぐに俺を見ようとはせず、だけど口元は笑っている。
「コーヒー、入っただろうから、私運ぶね?」
「……ああ。頼む。」
まだ抱きしめていたいが、これ以上虐めると拗ねそうだ。それでも解放されたとばかりにそそくさといなくなろうとしているのも面白くない。
だから。
「っっ、」
「冬、」
冬陽の手を咄嗟に引いて、引き寄せた。
「好きだよ。」
「っっ、」
耳元で囁いたのは、俺の気持ちだ。
「もうっ、」
「ははっ、」
少し、悪戯心も働いたけどな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます