第44話
しかしそれが俺たちの日常で、冬陽がいるからこそ、俺の日常は存在する。
「そろそろ分かれよ。お前の存在の重さを。」
唇を噛んで涙をこらえる冬陽は、ゆっくりと俺の胸に頬を寄せる。
小さな身体を強く抱きしめた。窒息しないように、壊れてしまわない程度に、強く。
「俺は、冬陽がいないと生きていけないんだ。」
これだけは、胸を張って言える。
「ふふっ、でも私、めんどくさいよ。」
「そんなのへっちゃらだ。」
「……うん。」
この腕に抱く夢を見ては目覚めた。胸にあるはずの温もりは消えていて、もちろん初めから居はしない。
その時感じる喪失感は、冬陽に出会うまで何度も経験した。
冬陽を失うことを考えれば、画像のことなんてどうってことない。
どちらにしろ、いずれ立ち向かうべき問題だ。
「あの、さ。」
「……なんだ。」
気まずそうな兄貴が、頬をかいてこちらを見ている。その顔はゆで蛸のように真っ赤で、本当に28なのかと疑ってしまうほどだ。
「ラブシーンは、別でお願いできない、かな?」
「っっ、すいませんっ、」
冬陽が飛びのこうとするから、再び身体を引き寄せた。
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