第43話
それでも俺は、イラついた。
「受けてやるよ。取材。もちろん冬陽ありでな。」
「雀、」
ガッツポーズの兄貴から視線を逸らして、責めるように俺の服を引く冬陽を睨みつけた。
ビクリと肩を強張らせた冬陽を見て胸が痛む。だけど分かってほしかった。自分の価値を。
「あの画像な、削除はしたが出てこないとは限らない。」
「っっ、じゃぁ、」
マスコミが冬陽の問題に注目したとして、苦しめてしまうのは目に見えている。正直、俺もこの仕事は受けたくはない。
それでも、受けようと思うのは。
「もちろん冬陽のことは一切NGで取材を受ける。写真にお前が登場するわけでもない。だけどな、この仕事のコンセプトは小説家・雪花の日常だ。それはもちろん冬華雀、俺の日常でもある。」
「ん。」
額に手を滑らせれば、俺をまっすぐに見る冬陽が片目をつむる。その仕草すら、俺を吸い寄せて離さない。
「冬陽は俺の日常の大部分だろ。いなくてどうすんだ?」
「雀……。」
俺たちの関係は世間に堂々と明かせるものじゃないかもしれない。
出逢いから今まで、普通のことなんて一つもなかったからだ。
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