第41話

年に1冊の本なのに、調べる資料の量は増大で、1日中何かを調べている。度々予知夢にうなされたとしても、雀が書斎に入らない日はないほどだ。



それだけで、雀の小説に対する向き合い方が分かる。とても仕事を愛している証拠だ。



「私は、っっ、」


「冬さん?」



だから、雀が大好きな仕事を、私の存在が引っ張るなんて、絶対にだめなんだ。




「……なにしてんの?」


「雀。」



すぐ後ろから聞こえた雀の声に反応した秋穂さんは気まずそう。私の肩の強張りをほぐすように雀の手がゆっくりと撫でた。



「その仕事なら断っただろ。」


「でも、」



気まずそうな秋穂さんは、私をチラリと見て視線を外す。悪いことをしてしまったな。秋穂さんは雪花にプラスになるというから話を持ってきてくれたのに。



でも、断ったわけじゃないから。私抜きでなら、大丈夫。その日は私は、外に出てれば問題ないわけだし。私の痕跡はきちんと消していれば、撮影されても大丈夫なはず。



そう言おうと口を開いたんだけど。




「でも気が変わった、受けてやるよ。」


「マジで!?」



それは雀の声で阻まれてしまう。

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