第38話

「正直さー、傷ついたんだよね。」


「っっ、ごめんなさい。」




一方的に避けて、さっきのカフェでも迷惑かけて。そりゃ嫌になるよね。俯いた私の目に、涙が溜まる。喉の奥がきゅっと苦しくなって、必死に涙をこらえた。



「だからさ、条件があるんだけど。」


「え?」


落ちてきた低い声に顔を上げれば、険しい表情の光彦くんが私を見下ろしていた。思わず身体が強張る。だけど、それで許してくれるなら……



「頬にチューしてくんない?」


「マジで殺す。」



できることなら、なんでもしようと思ったんだけど。



「えー?冬ちゃんのチューならおじさんなんでも許せちゃう~。」


「表出ろ。一生この家出禁にしてやる。」




さっきの恐い雰囲気から一転、光彦くんは雀に胸倉を掴まれながらも顔はゆるゆるに緩んでいる。



「ちょ、雀くん離してっ。」


「今お前の息の根を止めとかないといかん気がする。」



なんだか、久しぶり。



「ふふっ、」


「わっ、」


「おっ、」




じゃれ合う2人を、めいいっぱい抱きしめた。



「大好き。」


「それは俺だけに言えよ。」


「そうそう、俺だけにね?」


「は?」



また揉め出した2人。ほんとに、大好きな人たちだ。久しぶりに、ほんとに笑えた気がした。

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