第35話
side 雀
「どういうことだ。」
「えへ。」
冬陽が帰るなり、俺に抱きついて離れない。それは全然ウェルカムなんだが、その状態が問題だ。
光彦の話では、お茶をしていたカフェからずっと泣いているらしい。目は赤く腫れ、光彦のであろうハンカチで押さえてもそれは止めることができない。
なんとかソファーに座った今も泣き止む様子のない冬陽は、俺の腕の中から離れまいと強く抱きついていた。
「えへじゃねえだろ、殺すぞ。」
「く、口が悪いよ雀くん。」
頬を引くつかせる光彦がなぜ冬陽といるのか。しかしそれ以前に、冬陽を泣かせたのがこいつなら、マジで絞め殺してやる。
ジッと光彦を見ていたら、冬陽が俺の胸元の服を引いた。
「ん?」
真っ赤な目で俺を見上げる冬陽。それはまるで弱ったウサギみたいで。思わず喉が鳴った。
「っっ、みっ、光彦くんっ、」
「それは、ダイイングメッセージならぬクライングメッセージだな。」
「うまいっ。さすが有名作家!」
犯人の光彦が必死に俺を持ち上げるが。冬陽を泣かせた時点で命はない。
こいつこそ本物のダイイングメッセージを書くことになるだろう。
ギッと睨みつければ、視線を逸らした光彦はあからさまにシュンとしてみせた。
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