第33話
side 光彦
言った言葉は本心だった。
久しぶりに見た冬ちゃんの変わりようは、目を疑うほどで。死んだような目は人そのものを嫌悪していた。
雀から詳細は聞いていないが、学校に行き出してすぐの面会謝絶。どう考えても学校で何かあったんだろうとは思っていた。
それにしても、秋穂や俺まで拒絶するのは極端すぎ、そのことで事態の重みも予想できる。
そして今日、会いに来て確信した。だからこそ俺は言っておきたかった。
もしこの子が歩くことができなくなるのなら、雀なら立たせてやれる。
何も見たくないと叫べば、雀はそうさせてくれるだろう。
それだけ狂気的な愛し方なのに、雀の存在はこの子を救う。そしてこの子は、雀を救うんだ。俺はそう思う。
冬ちゃんは、雀だけを信じればいい。そうしてこの子が前を向けた時、周りの人間へも目を向けれるようになれればいいんだ。
俺は壊れた人間をたくさん見てきた。
嫉妬と対抗心、そして栄光への執着。それらが蔓延るファッション界では、負けた人間は壊れるのみ。
全てに打ち勝つ強さを持って前を向いている子だけが、頂点で歩ける。
そして頂点を知る彼女たちには、必ず彼女たち自身を支える人間が存在する。
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