第32話
「冬陽冬陽冬陽。人生まで賭けて君を想い続けるんだから、もはや馬鹿を通り越して変態だけど。」
呆れ顔の光彦くんは、さりげなく私にハンカチを差し出してくれる。それを受け取って涙をぬぐった。
「正直ね、雀の傍に君がいるの、俺は反対だったんだ。」
私を見つめる笑顔は、初めて会った時みたいに冷たく見えて。緊張で身体が強張った。
固まる私を見て、光彦くんは笑う。
「でも逆だった。あんな馬鹿を引き取ってくれてありがと。」
「え?」
思わず発した途惑い。
「だってあれ、もう君しか見えないじゃない。それならとことんついていってあげてほしい。」
一瞬目を伏せた光彦くんが目を上げる。その瞳はまっすぐに私を見て、光彦くんの大きな手は私の手を優しく包んだ。
「雀を信じていてくれれば、それでいい。他の誰も信じられないとしても。」
「っっ、」
光彦くんの言葉は、まるで全てを知っているかのようだった。だけど多分光彦くんはなにも知らない。
私が今抱いている罪悪感も、自分への嫌悪感も、ついて回る疑心も全て。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます