第31話
「……。」
「分かる?」
画面いっぱいに広がるのは、雀の想い。
「雀のスープ、美味しかった?」
「……ん、」
声にならない返事を嗚咽と一緒に飲み込んだ。同時に浮かぶのは、雀の優しい笑顔。
『これだけでも飲んどけよ。』
食欲のない私に、雀はよくスープを作ってくれた。それはとても美味しくて、食べやすくて。
そして何より温かかったから。
「雀はさ、ああ見えてだめだめなんだ。」
涙をこらえるのに精いっぱいで、口を開くことはできない。だけど光彦くんの言うことは違うと思った。
雀は、ダメなんかじゃない。完璧で、最高に素敵な人だ。
「頭の中は、冬ちゃんでいっぱい。寝ても覚めても、ご飯食ってても仕事してても、友達といてもいつも、君のことばかり考えてる。」
思わず目を見開いた。こらえていた涙がポロリと零れて、頬を伝う。
「俺とのやりとりも、冬ちゃんのことばかりだよ。普段相談なんてしないあいつが俺に相談してくるのも君のこと。ね?馬鹿だろ?」
何度も頷いた。雀はほんとに馬鹿だと思う。私なんかをそんなに想ってくれてるなんて。
私には、そんな価値なんてないのに。
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