第25話

side 冬陽




光彦くんが連れてきてくれたのは、オシャレなカフェだった。




高級店が軒を連ねるショッピング街にあるそこは、私みたいな学生はいない。



子供連れのママはものすごくオシャレだし、キャリアウーマン風の女性はパソコンを前に優雅にコーヒーを飲んでいる。



そこに突入した光彦くんも違和感がなくて。私だけが場違いなようで大変居心地が悪い。



しかも、光彦くんが店内に入った瞬間、店内がざわめいた気がした。光彦くんの格好はそんなに派手じゃないのに、この人は歩くだけで目立ってしまうらしい。


私、制服なんだけど。



え、なんでこの子?みたいな女性たちの視線が痛い。



だけど、気まずい思いをしながらも光彦くんに奢ってもらったコーヒーとケーキの味は絶品で。思わず周りを忘れて夢中になってしまう。


そんな私をニコニコ顔で見ながら、光彦くんはコーヒーを飲んでいる。



私が食べるのを見ているだけで、なにも話そうとはしない。すごく、気まずいんだけど。



このまま、ケーキだけご馳走になって帰るなんて図々しいけど、できれば帰りたいな、なんて、まだ逃げようとしている自分がいる。



どうやら私には、逃げ癖がついてしまっているらしい。

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