第16話

初日に栗山さんに言われた通り、私はほんとに最低な人間だ。




だから、栗山さんがもし私と一緒にいる目的が、友情とは違っていたとしても、私は責めることなんてできない。そんな資格、初めから持ち合わせていないのだから。




6月に入って、雨が頻繁に降る季節になった。学校の中もなんとなく暗くて、湿っぽい。



スマホの画面を押せば、スマホに内蔵されている簡素な待ち受け画面が姿を現した。



なぜ私は、こんなに最低でいられるんだろう。スマホを見るたびに思う。



誰も信じられなくなった。それは秋穂さんや光彦君も例外じゃなくて。



姿を見るのも嫌だというわけじゃないけれど、信じられなくなったくせに、待ち受けにして楽しむなんて違うと思ったから。




雨音と教室内の騒音、そして時折混じる栗山さんの声は、遠く薄れていく。



雀とメッセージでやりとりする。



他愛無いことだ。いつも家で話しているような内容。



授業で分からないことがあったとか、夕飯の話とか、今度公開する映画の話。この間食べに行ったご飯屋さんの話とか。



そのやり取りの中だけ、私は笑っていた。



ここがどこかも、自分がどうしているのかも関係ない。スマホの中にいる自分は楽しく笑えているのだから、それでいいのだ。

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