第9話

もう私には、雀しかいなかった。



頭では分かっていた。恨むべき人は数人だけだと。それなのに、感情が、心が追い付かない。



あの日を境に、私は雀以外の誰も信じられなくなってしまった。




篠塚先生も、他の先生も、そして栗山さんでさえも。



そして、秋穂さんや光彦君も、前と同じように見れなくなってしまった。




前から、人に対して警戒心がない方ではなかった。だけどそんなのとは違う。今は根本的に、人が怖いと感じる。



秋穂さんや光彦君、そして栗山さん、自分が信じるべき人たちが相手だとしても、それは同じで。



そう思ってしまう自分が最低だと思う。




だけどどうしても、無理で。


雀と過ごす時間以外が酷く色あせて見えた。



朝、学校へ行く。授業を受けて、お昼ご飯を食べて、家に帰る。それはこれまでと全く同じ過ごし方。それなのに、楽しくなかった。そして辛くも、なかった。



同時に沸き上がったのは、私を支えている雀という柱を失った時、自分はどうなるんだろう?という不安だった。




それを解消するために、こうして機会があるたびに雀を誘っている。



身体を繋げることで、より深い関係になれるという打算が働いているからだ。

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