第8話
side 冬陽
「お前を今すぐ、抱きたい。」
ストレートな言い方。普通そんなことを言われたら恥ずかしくて仕方がないのに。なぜかその言葉は、私を安心させた。
はしたないと思う。自分から誘うなんて。それでも、私の中で響く声は、雀と深く繋がりたいと懇願する。
本当は、私も怖いのかもしれない。
「ごめんね。」
「ん?」
至近距離、目を合わせる私たちの間には、何が起こったとしてもおかしくはない。
キスも、それ以上も、恋人同士なら許される距離だ。
それなのに、どこか私は、不安に思っていた。
「私、もう、」
雀に捨てられたなら、どうすればいいのかと。
「冬陽?」
私の考えを読もうとしているのか、雀が更に顔を近づけてくる。雀は、超能力者じゃない。見ただけじゃ分かりっこないはずなのに、目を見られないよう、誤魔化すようにキスをした。
それは啄むような、キスじゃなく、深く官能的なキスでもない。ただ、唇と唇が触れ合うだけのそのキスには、私の誤魔化しが混ざっている。
最悪なキス。それなのに胸が弾むのは、大好きな雀とキスをしているからだ。
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