第3話

その全てを手に入れたというのに、望んでいたまま冬陽は俺しか見なくなったというのに、どうしても、素直に喜べない。



満足はしない。その理由は分かっている。




「少しずつでいい。前に進め。」



俺を見上げた冬陽の目には、途惑いが浮かぶ。それに頷いてみせた。



「俺はいつも、一緒にいる。」



冬陽の身体を強く抱きしめた。少しでも自分の気持ちが伝わるようにだ。



「……分かってる。」



そう呟いた冬陽は、俺の胸に顔を埋めた。頭を撫でてやれば、冬陽は額を擦りつけて甘える。



全ての解決をするのは無理かもしれない。あるいは、勇気を出せばあっさりと解決するのかもしれない。



罪悪感とか、恨みとか、愛情とか、冬陽を完膚なきまでに叩きのめしたあの事件には色々な感情が混ざり合いすぎて、等の本人たちがそれに振り回されていた。



証拠とか、そんなのはどうでもいい。何をもって解決をするのかは、冬陽次第だ。



冬陽が逃げたとして、誰もそれを責めることはできない。そして冬陽が戦うとしても、同じことだ。



冬陽がこれ以上、傷つくことはない。今は好きなようにすればいい。俺にはそうさせるだけの力があるのだから。

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