第53話

side 大雅



「ねぇ、あれっていちゃついてるよね?」


「……そうだな。」




壁ドンをしている雛と親友らしい琴葉のやりとりは、どう見ても楽しそうにじゃれているように見える。



「違うし!」


「またまたー。大丈夫だって!男と友情は別だし!」



「そう言って裏切るのが女って生き物っしょ。」


「まぁ、そうだけど。」



そこは認めるんだな。しかし苦笑いの俺とは違い、女たちはそうでもないらしい。



「認めてんじゃん。」


「いや、一般論っしょ。」



嫌なとこ冷静だな。思わず笑った俺の隣で、腕に絡みつく陸人も噴き出した。


「ふはっ、面白い子だね。」


「だな。」



キョトン顔の親友を前に、さすがの雛もグッと何かを飲み込んだ。さっきから、雛にこんなに感情があったのかと思うほど、琴葉を前にした雛は年相応の少女に見えた。



……マジで、友達できてんだな。



普段一緒にいる俺たちより、ほぼ学校だけの付き合いの琴葉の方が、雛という人間をかき乱せている。



なんだかすげー、妬いちまう。



「でも、私は違うし。」


「ふはっ、あんたも女っしょ。」


「そうだけど。一般論と私は違う。」



雛を見つめた琴葉の目は、強い意志が感じられた。それを見て思った。これが彼女の強さなんだと。

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