第52話

怯える私をジッと見つめていた雛は、深く溜息を吐いた。そして私の肩口に額を乗せる。うわいい香り。さすが雛。



同じ女だけど、ドキリとするような色気。もしかしたらあの人も、雛に一目惚れしちゃったかも。私があの人に一目惚れをしたように。



それはちょっと、いやかなり悲しいな。



「……本気?」


「ん?」



雛が顔を上げる。その表情はなんだか酷く寂しそうで。雛の弱ってる感じ、ちょっとキュンとしちゃう。



「あの男。」



勝手にほわりとしている私を他所に、雛は視線で私の後ろのドアの先にいる彼を示す。



「本気、とは?」


「好きなの?」


「っっ、」



ド直球の質問に、顔が一気に熱くなる。そんな私を見て目を見開いた雛は、悔しそうに顔を歪めた。



こんな、雛の顔、見たことない。もしかして、もしかしなくても、これは……



「もしや、嫉妬かい?」


「は?なわけないじゃん。」


「嫉妬なの?」


「違うし!」



必死で否定すればするほど、雛の顔が赤く染まっていく。可愛い~。雛のデレ最高~。



「照れやがって、親友!」


「キモイ!」



悪態付いてるけど結局、男に夢中で私をほったらかさないで?そう上目遣いで言ってる系だろ?

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