第54話
「……ふん。良いし別に。」
「あ、そうやってはぐらかそうとする。納得いかないなら納得いくまでやれっていつも言ってるじゃん。」
自分を、信じている人間は、この世で一番強いと俺は思う。
力は、鍛え、身に付ければいい。金は稼げばいいし、容姿なんて今時買える。人望なんてものは行いを正したり、金を出せば集まり、風格でさえもそれはやり方次第であるように見せることができるだろう。
しかし、自分を信じるという行為は、どれだけやろうとしても難しい。
人は迷い、臆病で、恐れる生き物だからだ。
自分という人間を認め、自分を信じている人間は、窮地に追いやられたとしても顔を上げていられる。
俺たち狼や、雛のような人間は、弱い。だからこそそんな強い人間はとても眩しく、そして魅力的に見えてしまう。
「言えとか言わないよ。だけど雛、大丈夫?」
「は?何が?」
そんな弱い人間が、強い人間に抗おうなんて、到底無理な話で。
「大丈夫か、それだけを聞いてるんだけど。」
「……だいじょう、ぶよ。」
「……そっか。」
雛の感じている、不安、寂しさ。それを琴葉は無理矢理聞き出したりはしない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます