第46話

「あ、あとねぇ、」



無邪気に笑う陸人。こいつのこの笑顔は好きだ。本当に笑えていると思うから。



「雛のお気に入りちゃんも好き。あとアレも。」



頬杖をついて、陸人は舌ピアスをチロリと見せた。その表情はまるで、蛇のようで。妖気が体に纏わりつくような、そんな気持ち悪い感覚に苛まれる。



「あの狼、とても危ない気がする。そういうの、俺好きだなぁ。」



こんな女みたいで普段温厚なこいつが狼と言われる所以は、ここにあった。



危ないことを好み、人を傷つけることを厭わない。自分が信じるもの、こいつにはそれ以外を受け入れる器用さが皆無なんだ。



「彼には感じるんだー。俺と同じものを。」


「……それはなんだ?」




俺がこいつと一緒にいる理由。暴走しないように見張ってやる義理もねえのに、なぜかそうしてしまうのは……



「番(つがい)を探してるんだよ。極上のね?」




俺と同じ。誰かに愛されたがっているからなのかもしれねえ。それは、雛も同じ。学は、どうかしんねえけど。



「絶対俺が先に見つけるな。」


「えー、俺の方が数撃ててない?」


「数撃ちゃ当たるってのは迷信だ。」


「数ってほど撃ててない大雅に言われたくない。」


「うっせー。」



まぁ実際は、こいつらとバカ騒ぎしてんのがおもしれえだけなんだけどな。

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