第35話

確かにあの人は訳アリな感じだけど。



『あ、ダメだよ雛。彼、狼だからそんなことしたらサツ野郎に事情を聞かれちゃう~。』



どうしようか思いつかない私を他所に、思わぬところから助け舟が。



『……陸人、あんたね、』


『なにぃ?』


『なんでホットミルクなのよ。』


「そこか!」



電話越しってだけでこんなに疲れるとは。いや、ピアス陸人のせいで雛のマイペースぶり以上のめんどくささに直面してるんだ。



めんどくせー。これまで顔を合わせなかったのが奇跡だわ。



『えー、ホットミルクの方が美味しいし。』


『風呂上りなんだから冷たいのに決まってるじゃん。馬鹿なの?』


『馬鹿とは言われたことないなー。』


『あんたの見た目で言わないだけでしょ。』




もしダブルデートに誘われたら絶対に断ろう。そう心に誓った。



「雛。」


『これ、大雅にあげて。私が作ったって言っておくのよ。それだけでテンション保てるはずだから。私のは”冷たい”牛乳でね!』


『はーい。』



ここは、とにかく頼み込むしかない。



「雛!」


『聞こえてるっつの。で?病院に捨ててもいい?』


「だからダメだって。」



全く人の話を聞いてないな。いつもの雛らしさが今日は憎いぜ。

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