第29話

---、



「とりあえず、急所は全部外れてる。あれだけの人数倒してこれだから相当だなこいつ。明日は更に腫れるだろうな。熱も出たら解熱剤飲ませとけ。」


「いやいやいや、なんでそれで終了とか思ってるわけ?大雅が世話するに決まってんじゃん。」


「は?」



大雅は馬鹿で、女のことしか頭にない奴だけど、こう見えて医師免許を持っている。なのに医者じゃない変わった奴だ。



医者になればモテるのに、医者にだけはならないと言う。医師免許は気合いで取ったとかいうこいつはほんとに馬鹿なんだと思う。



試験だけで取れる資格じゃないでしょうが。




「野郎だろ?」


男は診ない。とばかりに顔を歪めている大雅。どうやらさっきの私の軽口の期限は終了しているらしい。




「私の男じゃないのに何で診ないといけないのよ。」



無駄なことはしたくない。



「雛ちゃん、そりゃ理不尽ってもんだぜ。俺なんか雛よりさらに関係ねえだろ。」




口を尖らせる大雅。そうしても顔が怖いから逆効果だ。



「今度、紹介してあげようと思ったのに。」



大雅くらい、お世辞と女でどうにかなるけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る