第28話

「わっ、イケメン!誰かと思った。月明りの下で見ると見慣れた顔も更にかっこよく見えるね!」



満面の笑みで言えば、


「取って付けた感やばくない?」


意外と辛辣な陸人は鼻で笑う。



「雛は顔だけはいいからな。わざとでも俺は逝ける。」



変な言い方をしている学は私にウインクをしてきた。



付き合いの長いこいつらだから分かること。私が心の底から笑っているかどうか、媚びを売ってるかどうかなんてすぐに見抜かれてしまう。



だけど。



「しょ、しょうがねーなー。」



例外もいる。



「馬鹿じゃね?」



そう呟いた学を視線で黙らせる。これで気が変わったらどうすんのよ。こんなデカい男台車に乗せるだけでも大変だし。



「いいんだよー。大雅は馬鹿で童貞で。俺たちの純粋担当なんだから。」


「なんだそれ。売れないアイドルのプロフィールみてえだな。」




ほくほく顔でイケメンを台車に乗せる大雅を見て、陸人と学は言いたい放題だ。でも、一度褒めてあげるとその手の自分に都合の悪い言葉は大雅の耳には届かないんだよね。



都合よすぎる耳だな。




「雛、乗せたぞ。」


「うん。じゃ、家にお願い。」


「任せろ!」



とりあえず、家にこれが運べればなんでもいい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る