第26話

side 雛




「なにあれ。」



物凄い早さで走り去った琴葉を茫然と見ていた。



初恋?琴葉が?あの無自覚無表情無天然女の琴葉が?



「くそー。膝枕に逃げられた。」


「お前はプロの姉ちゃんにいつもしてもらってるっしょ。」


「そういう学も並んでたじゃねえか。」


「うんうん。気持ちよかったもん。気持ちは分かるー。」


「「なんでお前だけ。」」



馬鹿3人は放っておくとして、足元の男を見る。



「確かに、イケメンだけど。」



ところどころ腫れてるけど、かなりのイケメンなのは分かる。だけどそれだけ。私は何も感じない。



状況から見て、喧嘩は強いみたいだけど。



私らがここに来た時にはもう、この男は琴葉の膝の上で気を失っていた。



どんな状況だったとか、何を話したとかは分からないけど、それだけであの琴葉が?しかも初恋って。どんだけ恋と無縁な生活をしてきたのよ。


でもちゃっかり、名前と電話番号を聞いておけって言って帰るところが琴葉らしいけど。



「なんで生年月日?」


「あ?乙女だからじゃね?相性占いとかあるじゃん。」



学が知った風にそう言うから。



「キモイ。」


「なっ、」


とりあえず素直にそう言っておいた。

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