第25話

殴ってやりたくなったけど、これに出ないと私自身が詰む。




「はい。」


『今どこ。』


「学校で先生の手伝いをさせられて今、駅に向かう途中。」



その間で不良を1人拾ったけど、嘘は申しておらん。



『迎えは?』


「いらないっす。もう駅近いし。」


『あ、そ。』




ブツッ。ソッコー切られた電話。じゃあね、とか気を付けなさいとか、言うことあんだろ母さんよ。



これで国語の教師というんだから、妙な話だ。自分の生徒にはちゃんとした態度を取れているんだろうか。



それよりも、目下の課題は自分の初恋よりお母さんを怒らせないということにチェンジした。



「雛。」


「なにー?」




スマホをポケットに入れて、立ち上がる。そのせいでピアス陸人が地面で頭を打ったけど、そんなことは気にしない。



「いたい~。」


「お母さんから電話がきたのよ。」


「うん、それで?」



それでもスマホから視線を外さない雛の肩を掴んで、まっすぐに、目を見た。



「この人、私の初恋なの。名前と生年月日と、電話番号、聞いておいて!」


「は?」




言うべきことは言った。あとは、帰宅のみ!



「さよなら!」



全速力で、駅へと走り出した。

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