第16話

何も答えない男はやっぱり、ところどころ腫らしていて、あまり大丈夫そうには見えない。



とりあえず男の頭を私の膝の上に乗せて膝枕の完成。どこかに引きずっていくという手は対格差と私の腕力を精査した結果諦めた。



改めて見てみると、ものすごいイケメン。さっき恋だと自覚したはずだけど、もしかしたら見た目にやられただけかもしれないと自分を疑ってみる。



それもそのはず。私は生まれてこの方、恋をしたことがない。子供の頃から、異性を異性として認識できないというか……私以外はその他大勢というくくりでしかない、欠陥人間だ。




だからこそ、雛なんてくそ野郎と付き合ってるのかも。あ。



「雛だ。」


ポケットのスマホを取り出して、タップした。雛に「雛様直通。」と言われて無理矢理ホーム画面に貼られたこれを初めて使う時が来ようとは。




『なに。』



ワンコールで出る雛。いつも遊びに行く時は余裕で1時間は遅刻するくせに電話は早いんだなと変に関心してしまう。



「あのさ、男拾ったんだよね。」


『は?』



そりゃは?だよな。私も雛が言ったらは?って言うわ。



「正確には怪我してるから治療してあげたいんだけど、訳アリの喧嘩っぽいから病院はちょっとって感じなんだよね。」

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