第7話

side 響也(きょうや)




ガキの頃から、毎日をどう過ごしてきたのか。記憶に残るほどの何かはなかったように思う。



退屈な人生。その退屈な出来事すら覚えてはいない。



「清水(しみず)、そろそろ入る気になったんじゃねえの?」


「……。」



物心ついた頃から、父親はいない。ずっと母親と二人だ。当たり前だが母親は仕事で忙しく、せっかくの休日すら家にいることは稀だった。


あいにく金はあったから不自由はしなかったが、母親を親として認識したことは一度もない。



ガキの頃、親に育てられたというよりは毎日来ていた家政婦に生かされたという印象だった。



俺の容姿はそっち方面の奴らの目に付きやすいらしく、変な輩に絡まれだしたのが中学に入ってから。



元々ガタイがいい方なのが幸いしたのか、初めてだったにしては喧嘩で負けたことはない。



それからずっと、道を歩けば変な奴らに絡まれた。体のどこかに【喧嘩をふっかけて】と書いてある紙でも貼ってあるんじゃ?と疑っちまうくらいだ。



毎日、出歩いては喧嘩ばかり。食い物も同じ。代り映えのない日々だ。



虚しさすら感じない。どうでもいいから。

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