第3話

「上杉っ、俺の授業中に盛大な溜息をありがとう!」




国語の河東(かわとう)が嫌味ったらしくその爬虫類顔を歪めて毒を吐く。


爬虫類が毒って。できすぎて笑う。



「ぐっ、っっ、」


「お前は黙ってりゃ美人なのに!その気味の悪い笑い方はなんとかならんのか!」


「あっ、いーけないんだー。先生それセクハラー。」



クラスのお調子者の男子が言った言葉で教室中が沸く。それに狼狽えるトカゲ……もとい河東も大変だなと笑いが収まった私は同情全開で見た。



「もういい黙れ!続けるぞ!」



顔を真っ赤にした河東が、なぜか私を一瞥して黒板に向き直る。……カメレオンみたいだな。



河東の眠りを誘う授業を耳にしながら、再び窓の外を見た。



いー天気。最高。桜はもう散ってしまったけど、春って感じ。



それなのに。



「肝心の恋が、訪れねえ。」


「上杉っ!聞こえてるぞ!」




溜息を吐いた私に、再び河東の叫び声が木霊した。

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