第2話

side 琴葉(ことは)




上杉(うえすぎ)という苗字は、強そうだから気に入ってる。琴葉という古風な名前も。



両親共に学校の先生をしている我が家はいわゆる固い決まりがたくさんあるけど、それを不自由だと思ったことは一度もない。



成績は上の下。努力でなんとかできるレベル。



高校に入ったばかりでやりたいことはたくさんあるけど、オシャレに時間を割こうとは思わない。ただ、ダサいというレベルまで自分を落とすのは本意じゃないから、それなりにしているとは思う。



自慢の黒髪は肩までストンと伸びている。ストパーなんてかけなくてもこんなにもサラサラでいられているのは、毎朝の念入りなアイロンのおかげ。



コンプレックスは目。薄い茶色のそれは、所謂下三白眼って奴で、ただ見ているだけで眠そうだと言われてしまう。



化粧はそんなに濃くない方が好き。制服に付くのが嫌だし、自分の顔にはナチュラルな方が合ってると思うから。



顔は、そこそこだと思う。多分。人からは美人と言われるけどそれは、本心じゃないかもしれないし。自分では不細工ではないとは思っている程度だ。




「はぁ。」




思わず、ため息が漏れた。それはきっと、春の風に乗って消えていくことだろう。切なさを残して。

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