第47話
屍となった女を抱きながら、不味い食事だと溜息をつく。こんな習慣なら、いっそ和子と一緒に同じものを食した方が楽しいのではないか?
「ふ、」
「火炉様、お気に召しましたか?」
羽水の弾んだ声に、ハッと息を飲んだ。
「いや、相変わらず、美味くはないな。」
「……さようですか。」
正直戸惑っていた。贄のことを思い出して笑うなど、これまでに一度だってないことだった。
若き頃は食べ盛りで、贄の世話を焼いては恐怖に陥れ、食らっていた。そのやり方は一番手間がかかるが、最も美味に感じる。
ある程度年を取り、口も贅沢になったのか、やがて贄たちに手間をかけても無駄だと思い始めた。
桜土や羽水は俺に食事を楽しませようとしているが、不味いものはどうやっても美味くはならないものだ。
「っっ、」
不意に、甘くかぐわしい香りが鼻をついた。
目の前の肉片ではない。部屋に控えている侍女でもない。羽水も匂いに気付いているのか、所在を探っているようだ。
自然と目が動く。鼻で感知したその所在を、俺の身体は即座に見つけているのだ。
「和子、いるのか?」
言葉にすれば、返事とばかりに血の匂いが濃くなった。
嗚呼、なんというかぐわしき、嫉妬の香り。
今にも果てそうなほどの快楽が、俺の脳内を包み込んだ。
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