第46話
side 火炉
昔から食事をするのは、好きではない。
どれも一辺倒な味だ。同じような程度の恐怖を感じている女の体は、それ以上でもそれ以下でもなく、人間でいえば毎度同じ物を食わされているようなものだ。
一瞬だけ、血肉となった女の中で果てる時だけ、快楽を感じる。しかしその一瞬を体験したいがために人間を食らうのにも飽き飽きしていた。
人間の女は、どれも同じ味だ。
姿を現した俺に怯え、そして抱かれる時だけなぜか気を許す。なぜか分からなかった。自分が今から食われるというのに、人間の女は快楽を与えられただけで一瞬でも俺に気を許している。
理解できない、家畜の下等な脳は、俺から与えられる快楽に下品な泣き声を発する。
人間同士でええばこれは喘ぎ声と言うのだろう。しかし俺たち鬼から言わせればこれは、豚の泣き声と変わらないほど醜く、聞くに堪えないものだった。
女が絶頂を迎えた瞬間、首筋に歯を立てれば、女の身体は絶頂からなのか絶命からなのか分からない震えを起こす。
今回の女も、美味ではない。いや、今回の女は欲に忠実だっただけに、いつもよりも不味い。不快感に包まれたせいか、自分の快楽については諦めた方がよさそうだと溜息を吐いた。
人間の肉は美味だ。しかしそれに感情が込められていなければ、それこそその辺の豚を食った方が美味い。
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