第40話

人間と鬼の寿命は全然違う。もちろん鬼の方が長生きで、中には万年生きる鬼もいると聞く。



それはもはやおとぎ話の度合いで曖昧なものだけど。


鬼にとっては肉でしかない私たち人間が、年はいくつ?なんて気軽な会話ができるわけがないから当たり前だった。



鬼は、見た目がほぼ人間に似ている。だけど老いは一切分からず、鬼はいつまでも見た目が若々しいという。



だけど、幼さやあどけなさは、鬼でも分かるようで。



目の前でブルブル震えているこの鬼は、きっと人間にして10代前後だろう。



「私に貸していただけますか?」


「……あ、」



歯を鳴らす侍女は、火炉を見ようとして無理だったのか固く目をつぶる。



「大丈夫です。」



だからそう言って、少し強引だけれど彼女の手にあった直垂ひたたれを取った。



「あの、火炉。」


「なんだ。」



椅子に頬杖をついて私を見る火炉は、まだほぼ裸。上に着るはずの着物も前は閉じておらず、だらんと垂れ下がっている状態だ。



「服を、着てください。」




これは、この子を助けるというより、私の為にも。裸の火炉をいつまでも平気で見ていられるほど、私には免疫がないから。



ジッと見つめてくる火炉の表情は分からない。



大事なところを見ないように目を逸らすので精一杯なのだから当然だった。

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