第31話
「苦しいって。」
笑い交じりに俺の手を外しにかかる雷知の力は尋常な力ではなく、苦々しく思いながらも解放するしかない。
「まぁまだまだ。愛情はね、これから気付いて、発展させ、そして下り坂も乗り越えてその先に真実の愛があるものだ。」
雷知はまるで、人間の詩人のような言葉を使う。人間は音楽や詩、物語を好む。太古の昔、人間が鬼を狩っていたその時、人間は毎夜宴を開き、自身の文化に酔いしれていたという。
今でも村では定期的に祭りが開かれ、畑の収穫の向上を神に祈り、我々鬼族の消滅を祈っている。
「気味の悪いことを言うな。首輪をしたとしてもあの女はただの食糧。贄に過ぎない。」
「そうかなぁ?」
雷知はゆっくりと歩いていき、転がっている侍女の死体を引っ張り上げた。
「贄に食欲を抱いただけで、こんなになるまでしたことはなかったよ?それにきっと、この子の家族は全て火炉に殺されてしまうだろうね。それほどまでに火炉が"ただの食料"に執着している。それだけで僕には前代未聞なことのように見えるよ。」
「っっ、それは、」
ご本人は気づいていらっしゃるのかは分からない。
しかし確かに、あのカシラが名前を呼ぶことを黙認し、自ら慈しみ育てているのは、紛れもない事実だった。
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