第28話
side 桜土
「チッ、」
忌々しさに思わず舌打ちが漏れた。目の前に落ちている同族の死体を見下ろせば、苛立ちは増すばかり。
「余計なことを。」
足で踏みつければ、聞きなれた音が聞こえる。
主に人間を踏みつけた時に発する音は、生活音や楽器では表現しきれないだろう。
耳慣れたその音は、忌々しい人間を最高に貶めた時に出る音。俺たち鬼族に負け、ただの食糧に成り下がったあの種族に、自分たちの立場を分からせてやっているのだ。
贄とは、食料に過ぎない。
我々鬼は贄を飼う。自分の首輪を着けさせ、いずれ食べるために世話をする。
しかし世話とは、家畜と同じもの。
胸に抱き、大切に育て、そして愛することではない。
カシラが好む味は恐怖。それは最も簡単なように見え、最も難しい感情だ。
人間とは慣れる生物だ。狩ってきてすぐならば最高の恐怖が味わえるだろうが、時をかければかけるほど、それは和らいでいく。
しかし生贄として献上されたとしても、狩りをしてきたとしても、人間というものはやせ衰えていて、すぐに食っても美味い者は皆無に近い。
どちらにしろ家畜として肥えさせ、肉の質を上げる必要がある。
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