第25話
人間が住む場所は村と呼ばれる規模のものが多い。太古の昔は周囲を照らす電気というものがあったらしいけれど、今では灯りも火に頼り、原始的な生活をしている。
私の出身の村も、私を襲った村人の村も恐らく同じようなもので、こんなに贅沢で清潔な生活はしていない。
室内を照らすのは、村と同じく炎だというのに、煌びやかなガラスの装飾に包まれたそれは、どんな原理で燃えているのかすら想像できない。
鬼は、妖術を使える。これは彼らが妖術で出した特別な炎なのかもしれない。
その炎に照らされて、不意に侍女の1人の赤い目に炎が宿った気がした。
「あの、」
侍女の長い爪先が、私の首元に伸びていく。ぺろりと舌で湿らせた唇が緩んで、興奮しているらしいその表情には、はっきりとある欲が浮かんでいた。
【食欲】
思い知らされる。こんなにも幻想的なこの場所で、優しく扱われてきたせいか忘れかけていたもの。
私はただの、食べ物に過ぎない。
「う"っ、」
途端に、侍女の目が見開かれ、それはぐるりと白目を剥く。
「っっ、」
息を飲んで見つめる私を二度と見ることなく、侍女の体は勢いよくお湯に叩きつけられた。
目の前で浮かぶ後頭部を呆然と見ていると、その体は誰かに踏みつけられ、湯船の底に沈む。
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