火炉の贄
第24話
side 和子
「和子様、湯浴みの時間でございます。」
「……はい。」
名も知らぬ村の村人に襲われ、私が鬼の生贄になって1ヶ月。未だに私は生きている。
それも、これまで体験したことのないほどの贅沢な暮らしで。
毎日2回、朝夜、私は湯浴みをさせられる。補助として侍女が2人傍について、身体を洗われた。
そして火炉はそれを、なぜかそこにある椅子に座って不機嫌そうに眺めている。
数日は戸惑った。なんせ裸を見られるのだから。女の鬼とはいえ侍女に、自分でもあまり触れない部分を念入りに洗われるのは嫌だ。
それに、火炉。人の裸を見ておいてそこまで毎回不機嫌にならなくても、と思う。だけど火炉に直接言えないのは……。
「気持ち良いか?和子。」
「……はい。」
必ず、私のことを気遣ってくれるからだった。
確かに不機嫌そうなのに、火炉は私から視線を外さない。
そして。
「和子様。」
「あ、はい。」
なぜか首筋だけは、侍女が洗うことを禁じられているようだった。
差し出された物はふわふわで、水を含ませれば優しく身体を洗える。
鬼の住処は、想像していたものと大きく違っていて、とても綺麗。
鬼は食らう側、人間は喰らわれる側。太古の昔からそうなったせいか、人はやがて文明というものを手放した。
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